沐浴
妊娠21週で胎児奇形のために中期中絶しました。
この悲しみと罪悪感は消えることはなく、心に重くのしかかってきます。
悲しみと向き合い「生きる」ことに前向きになるために綴っています。
夫と子どもたちが帰ってしばらく、ベッドに横になりながら「千惺(ちさと)」を眺めていました。
息をしているんじゃないかなと、たびたび確認しました。
もちろん「千惺(ちさと)」は息はしていません。
「ねえ、いつまで寝てるの?」聞いてみました。
何度も聞いてみました。
聞きながら、また涙が流れました。
そのうち、看護師さんが来てくれました。
「みなさん、帰りましたね。にぎやかでいいですね。どうですか?赤ちゃん、お風呂に入れてあげましょうか。」
こんな小さい赤ちゃん、どうやってお風呂に入れるんだろう。
この病院で2回出産した経験があるので、ふと赤ちゃんの沐浴場所が頭に浮かびました。
「あそこで、お風呂にいれるのかな?」なんて思っていると、看護師さんが言いました。
「お風呂の用意、してきますね。」
しばらくして運ばれてきたのは、小さな白い洗面器。
中には温かいお湯が入っていました。
「お風呂の前に、おへそを止めている器具とりましょうか。」
おへそを止めている白いプラスチックをはずすと、血液が流れ出てきました。
次から次へと「千惺(ちさと)」から血が流れ出て、看護師さんがガーゼで押さえます。
「ごめんなさいね、まだ血が止まってなかった。」
これは、誰の血液なんだろう、「千惺(ちさと)」の?私の?
変に冷静に考えてしまいました。
それから、この血液をきれいにするためにも小さな白い洗面器に「千惺(ちさと)」を入れました。
「気持ちいいね。よかったね。お風呂に入れて。」
そういいながら、小さな体にお湯をかけていきました。
小さな、小さな体を丁寧に洗いました。
洗いながらも、涙が止まりません。
よかったね。
よかった、最後に温かいお湯に入れて。
よかった。
最後に洗ってあげられて。
ごめんね。
許して。
そんな思いで、丁寧に洗いました。
病室のドアがノックされて、誰かが入ってきました。
担当の医師でした。
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